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在宅勤務のイラスト

 新型コロナウイルスの流行で、心身の健康状態や生活満足度などウェルビーイング(幸福度)は高所得層では向上したが、低所得層では悪化したことが、慶応大学の山本勲教授と石井加代子特任准教授の分析でわかった。所得格差は政府の経済支援策もあってか拡大しなかったが、低所得層では在宅勤務が浸透せずその恩恵を受けにくく、ウェルビーイングの格差が拡大していた。

 研究成果が国際専門誌のオンライン版に掲載された。「所得や資産だけでなく、ウェルビーイングなど非金銭的な部分にも注目して格差問題をとらえ、政策対応を考える必要がある」と提言している。

 全国から無作為抽出した5千人弱の成人男女の収入や就業状態などを追跡している家計調査のデータを使い、コロナ禍前後の変化を分析した。ウェルビーイングは、①メンタルヘルス②生活満足度③健康満足度④仕事満足度の4項目を調べた。①はK6と呼ばれる指標(0~24点)で点数が小さいほど状態がよい。②③④は0~10点で自己評価してもらった。

 分析の結果、所得格差を示すジニ係数は19~22年で大きな変化はみられず、中期的にも所得格差は拡大していなかった。コロナ禍初期に導入された特別定額給付金などの経済支援策が、特に低所得層の収入低下を阻む効果を発揮したとみられるという。

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メンタルヘルスの指標(小さいほど状態がよい)をみると、所得が最も低い層(Ⅰ)はコロナ禍でより悪化したが、最も高い層(Ⅴ)はさらによくなっていた=山本勲・慶応大教授提供

 一方、ウェルビーイングにつ…

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