「菜食主義者」や「少年が来る」などの作品で知られ、国境を越えて多くの読者を持つ韓国の作家ハン・ガンさん。朝日新聞によるインタビューの続編では、ハンさんの歩みに迫ります。小説を書くことの魅力、読書という旅路。そして、幸せを感じるひとときは。
暴力に満ちた世界で、希望を想像する 問い続ける作家ハン・ガンさん
多くの命が争いで犠牲になっている世界で、文学や作家ができることは。ハン・ガンさんが思いを語ったインタビューはこちら。
――小説を書くことにはどんな魅力がありますか。
「書いていく過程に魅力があります。あるイメージが最初に思い浮かぶ。そしてこんな小説だろうと漠然と考えるのですが、それはすごく書きたいものです。それに向かって近づいていく。最初は全然違うのですが、書いていくうちにだんだん近づいて、絶対にその通りになりませんが、少し近接した時、そんな時に魅力があります」
――作品を書く際には、全体の構想を先に決めるのでしょうか。着地点は未定のまま書き進めるのでしょうか。
「私は混沌(こんとん)の中で書くスタイルです。周りの作家たち、小説を書いた友人たちに聞いてみると、多くのことを決めてから書くようですが、私はそうではなくて、最後のシーンだけあるんです。一番最後の場面だけがある。しかし、中の部分のすべては決まっていない状態で、ちょっとした感じぐらいを持っていて、中間で大きく変わって、他のバージョンもいくつも書いてみて」
「説明するのがすごく難しいし、小説ごとに違ったりもします。小説によっては目次をすべて決めることもありますが、絶対にそのままにはなりません。(済州島4・3事件を描いた最新作の)『別れを告げない』は揺れながら7年にわたってたくさんの変化をしながら書いた小説です。(光州事件を扱った)『少年が来る』は1年半かかりましたが、最初に目次を決めていたので、少し早く終わりました。それも中間で大きく変わりました」
小説を執筆する際に、他の言語に翻訳されることを意識するのか。日本の作家のどんな作品を読んできたのか。子どもの頃、作家である父親をどう見ていたのか。ハン・ガンさんが語ります。
――作品を書く時、英語や他…