網膜色素変性症の治療製剤を準備する様子。0.3ミリの細さの注射針で、患者の目の中に製剤を注入する=慶応大病院提供

 慶応大などの研究チームは13日、目の奥の網膜で光を感知する細胞がなくなって失明する目の難病に対し、新たな治療法の臨床試験を始めたと発表した。網膜に残っている本来は光を感知できない細胞に、「光センサー」のたんぱく質をつくらせ、再び光を感じられるようにするという。

 臨床試験の対象は、網膜色素変性症。光を感知する視細胞が失われて失明する。日本では4千~8千人に1人が発症するとされる。

 視細胞は、隣り合う双極細胞を介して、光の情報を脳へと伝える視神経とつながっている。網膜色素変性症では視細胞がなくなっても、双極細胞や視神経は残っている場合がある。そのため、視細胞に代わって、双極細胞などに光を感知させることができれば、視力を回復できる可能性があり、研究が進められてきた。

 研究チームが注目したのが、名古屋工業大の神取秀樹教授らが開発した「キメラロドプシン」だった。ある種の微生物が持つ光に反応するたんぱく質を改良して、感度を強めたものだ。

 治療製剤は、慶応大発ベンチャーの「レストアビジョン」社が開発。製剤を目の中に注射すると、網膜を構成する細胞のうち、主に双極細胞に遺伝子が導入されてキメラロドプシンがつくられるようになる。マウスなどの動物実験では、光への感受性が回復することが示されている。

 研究チームによると6日、慶応大病院で網膜色素変性症の患者1人の片目に製剤を注射した。患者は1週間ほど入院した後に退院した。今のところ、安全上の問題はみられず、今後も外来で経過観察を続けるという。

 今回の臨床試験の主な目的は安全性の評価で、同社によると、約1年半で6~15人に製剤を注射し、それぞれ半年間の経過観察をする。結果をふまえて、有効性を検証するために、より多くの患者を対象とした追加の臨床試験を実施するかを検討するという。

 網膜色素変性症の原因となる…

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