琉球国王を描いたとされる肖像画「御後絵(おごえ)」が米国でみつかった。戦前に撮影されたモノクロ写真だけが現存し、沖縄戦などで実物が存在しないとされていた絵の発見で、沖縄美術史の研究が進む可能性がある。

 御後絵は、琉球王国の第二尚(しょう)氏(し)(1470~1879)の歴代国王の肖像画で、その王が亡くなると、王府の絵師によって制作されたとされる。尚氏の菩提(ぼだい)寺である円覚寺(那覇市)が所蔵していたが、明治政府による琉球処分(1879年)によって王国が強制的に日本に併合されると、次期国王になる王子の邸宅だった旧中城御殿(なかぐすくうどぅん)に移された。中城御殿は沖縄戦で破壊され、御後絵も失われたと考えられたという。

 ところが、当時の関係者らの証言を集めたところ、御後絵は持ち去られた可能性もあることがわかった。その後、沖縄県は2001年、米連邦捜査局(FBI)の盗難美術品リストに登録した。それから22年がたった昨年、御後絵など22点が発見されたと連絡があり、今年3月14日に引き渡しが実現した。

モノクロ写真が支えた研究

 原本が存在しない作品は研究対象として扱われない美術史のセオリー。そんななかで、御後絵の存在を伝えていたのが「鎌倉写真」と呼ばれるモノクロ写真だった。

第18代尚育王の御後絵=鎌倉芳太郎氏撮影、沖縄県立芸術大学付属図書・芸術資料館所蔵

 染織家で沖縄文化研究者の鎌…

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