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焼失した木造アパート。6人が死亡した=2017年5月8日午前9時16分、北九州市小倉北区清水2丁目、朝日新聞社ヘリから
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 北九州市小倉北区の木造2階建てアパートが全焼し入居者6人が死亡した7年前の火災で、福岡地検小倉支部は17日、現住建造物等放火と住居侵入に加え、殺人と殺人未遂の罪でも元住人で無職の井上浩二容疑者(56)を起訴した。弁護人によると、井上容疑者は起訴内容を否認しているという。

 捜査にあたり、県警はアパートに近づく不審人物を捉えた防犯カメラ映像や、「放火」であることを裏付ける再現実験など間接的な証拠を積み重ね、井上容疑者を逮捕。殺人と殺人未遂容疑は含めていなかった。

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 一方、地検小倉支部は井上容疑者が元住民として建物の構造などを把握していた上、人が眠っているかもしれない夜間に1階玄関付近に火をつけたことなどを踏まえ「人が死んでも構わない」という「未必の故意」による殺意が立証できると判断したとみられる。ただ、直接証拠がない状況は変わっておらず、裁判員裁判では間接証拠のみでの立証を迫られることになる。捜査幹部の一人は「薄氷を踏むような状態だ」と語る。

 県警、検察が今回の逮捕、起訴までに要した時間は、火災の発生から7年あまり。この間、何があったのか。

防カメに「不審人物」、欠けた直接証拠

 ある捜査関係者は「当初は失火の可能性が高いとみていた。放火とわかっていたら、(証拠となる)防犯カメラの映像をもっと得られていたかもしれない」と明かす。家庭用の防犯カメラの保存期間は数日~1週間程度だという。

 アパートは廊下が建物内部にある「中廊下式」と言われる構造で、廊下の両脇に4畳半~6畳の居室が並んでいた。北九州市消防局は、2017年9月にまとめた調査報告書で出火原因について「不明」とした。

 一方、県警は複数台の防犯カ…

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