小説家の李琴峰さん=稲垣純也氏撮影
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寄稿・李琴峰さん 小説家

 小学4年生の頃だったか、台湾の家の隣に、1人の外国人が住んでいた。アメリカから来た白人男性で、塾で英語を教えていたらしい。子どもの私から見れば、彼の生活は乱れていた。よく酒を飲んで酔っ払うし、清潔感もない。時間にルーズで、家の中が汚いといううわさも聞いた。

 ある日、私は学校の先生に呼び出された。先生は私が書いた作文について、「なんでそう思うの?」と聞いた。その作文に、私は「外国人は嫌い」ということを書いていた。

 たった一人を見ただけで「外国人は嫌いだ」と思ってしまった私は、間違いなく人種差別主義者(レイシスト)の素質があった。

「お前は外国人か」

 私が暮らしていたのは電車が…

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