連載「凄腕しごとにん」 法人類学者・橋本正次さん

スーパーインポーズ法は、亡き恩師から伝授された。「ご覧の通り、至って原初的な装置なんです」。いまも海外から実演の視察に関係者がやってくる=東京都千代田区、村上健撮影

 事件・事故や災害に遭った身元不明者を特定し、大切な人の元へ帰す。40年余りで2500件を鑑定した凄腕がいます。東京歯科大名誉教授の橋本正次さんにその経験や秘訣(ひけつ)を聞きました。

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 重大な事件・事故、地震災害に際して、身元がわからない人を調査・究明する画像鑑定を国内外で手がけてきた。40年余りにわたり、その数およそ2500件。この分野では、日本で「唯一無二の請負人」として依頼が舞い込むスペシャリストだ。

 現場に残された遺骨、その人物とおぼしき写真。それら生前・死後の手がかりの細部を画像で見比べる独特の技術を駆使し、「あの人ではないか」という疑いを「この人に違いない」という確証へと導く。

 「人間は誰一人として、同じ人は存在しません。双子のように顔かたちが似ていたとしても、決して同一ではないのです」

 仕事の「原点」は1985年夏、32歳の時に立ち会った日航ジャンボ機墜落事故の調査だ。乗客乗員520人が亡くなった航空史上最悪の惨事。現地へ駆けつけ、4カ月がかりで身元の確認にあたった。

 遺体は損傷が激しく、作業は…

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