水俣病患者らの話を聞く伊藤信太郎環境相(右から2人目)=2024年7月8日午前10時56分、熊本県水俣市のほたるの家、代表撮影

 3日間に及ぶ環境相と水俣病患者・被害者団体の懇談が始まった。その初日となった8日の懇談で、伊藤信太郎環境相は冒頭、前回の懇談中にマイクの音声を切ったことについて改めて陳謝し、「大変つらい状況にあられる方々にできる限り寄り添って対応できるよう、省を挙げて取り組んでいきたい」と決意を述べた。だが、1日かけたやりとりの中で、国側の説明は従来と同じ主張の繰り返しが目立ち、団体側から失望の声も上がる結果となった。

 「マイクオフ」問題では、環境省が発足した原点でもある水俣病問題の被害者を軽視した姿勢が批判を浴びた。伊藤氏が長時間にわたって再び懇談に臨むことで、水俣病に向き合う姿勢を示す狙いがあった。

 しかし、各団体や支援者でつくる連絡会代表代行の山下善寛さん(83)は、この日の懇談で厳しく批判した。

 「ゼロ回答です。これでは水俣病問題は前に進みません」

 連絡会は、環境省が途中でマイクの音声を切った5月1日の懇談の際、共同で要求書を出していた。

 この約20年の間、最高裁などで国などが敗訴し、水俣病の被害を幅広く認める司法判断が出ている一方、環境省は従来の患者認定基準を堅持し、認定を求めても棄却される人が相次ぐ。こうした認定制度の見直しや、水俣病被害者救済法で定められた不知火海沿岸住民の健康調査を「一刻も早く行うこと」を求めた。健康調査は法施行からすでに15年たっているが、国はまだ始めていない。

 この日、伊藤氏はその「回答」を持参し、懇談の前半で自ら団体側に説明した。

「水俣病は公害の原点であると言いながら……」

 「最高裁判決において現行の…

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