高齢者らが渡りきれないため「河」と呼ばれることもある都内の幹線道路=東京都港区

 東京の中心部でスーパーや鮮魚店などの移動販売車の運行が急拡大している。都市部にも高齢化の波が押し寄せ、食料品など日常の買い物が難しい「買い物弱者」が増えているためだ。人口規模の大きさが背景にあるが、幹線道路が多いなど都市部ならではの事情も目立つ。

 高級ブランドの旗艦店などが立ち並ぶ東京・青山。そんな青山通りから細い道を数分歩くと、都営北青山1丁目アパートがある。4棟に約600戸が入る。

 平日午後2時ごろ、団地の真ん中のひらけた場所に、豊洲市場の仲卸・亀和商店が営む移動販売車が到着した。アジやタイなど市場直送の鮮魚が並んでいた。

 この日訪れた80代女性は、杖をついて5分ほど歩くのがやっとだという。「近くまで来てくれるのがありがたい。集まった住民や店員と話せるのも楽しい」と話す。

移動販売で買い物をする住民ら=東京都港区

 団地の自治会長、近藤良夫さんによると、5年前にビルの建て替えにより近くの大型スーパーが閉店。周辺にコンビニやスーパーもあるが、商品数は少なく、幹線道路を渡る必要があるのも不便だ。住民は高齢者が多く、都などと交渉して鮮魚店のほか、青果店など3事業者に移動販売に来てもらうようにしたという。

 都によると、移動販売車が回る都営住宅はこの数年で増えたという。都営住宅は約1600団地。移動販売は2019年度の11カ所から、今年4月時点では110カ所に増えた。23区内が約6割を占め、都心部の港区や渋谷区にもある。

 全国各地のスーパーと提携し…

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