写真・図版
小学生用の舞鶴引き揚げ給食=2024年10月3日午後0時10分、京都府舞鶴市桃山町、今林弘撮影
  • 写真・図版

 京都府舞鶴市では年に一度、「甘いカレー汁」が給食に出る。戦後、シベリア抑留などから舞鶴港に帰国した引き揚げ者に出された夕食のレシピを再現した「舞鶴引き揚げ給食」だ。今年も17日までに約6千食が市内の全小中学校で出される。

 「当時に思いをはせ、平和を願っていただきましょう」

 三笠小学校で3日、児童たちが校内放送でこう呼びかけた後、全校児童約130人が引き揚げ給食を口にした。

 メニューはカレー汁に麦ご飯、イワシとジャガイモの天ぷら、漬物、牛乳。6年生の前菜々花さん(11)は「甘くてスパイシーなカレー汁が一番好き」と話した。

 引き揚げ給食は、10月7日を「舞鶴引き揚げの日」とする条例を市が制定したことにちなみ、2020年に始まった。再現する際に参考にしたのは、終戦直後から13年間、引き揚げ者を受け入れた最後の年の1958(昭和33)年の夕食のレシピだ。

 引き揚げ事業を担当した厚生省(現・厚生労働省)舞鶴地方引揚援護局の資料に、使った食材の1人当たりの分量がグラム単位で記されている。なかでもカレー汁は牛肉やタマネギ、カレー粉などのほか、「砂糖10瓦(グラム)」とある。

 市教育委員会によると、そのまま再現すると甘すぎるので、砂糖は半分以下の4グラムに減らしている。普段の給食のカレーには砂糖を直接入れることはないという。

 舞鶴引揚記念館の山下美晴・元館長は「苦難を乗り越え帰国した引き揚げ者の体力回復のため、砂糖を多く使ったのではないでしょうか。家庭料理に近いものをと工夫したとも聞きます」と話す。(今林弘)

共有