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 米大統領選の投票が始まった。身の回りのお金のやりとりを通じて、海の向こうの盛り上がりを我がこととして捉え、国際社会のつながりを実感する人たちが国内にいる。

 「そろそろ大統領選あるのって知ってる?」

「なんの気なし」で始めた投資意識 世界的インフレで転換

 3連休中日の3日夜、福岡市の居酒屋。福祉系の会社で働く男性(28)=北九州市=は、米大統領選と株価について友人と話していた。友人のスマートフォンの画面には、米国で大企業を幅広く網羅する「S&P500」の株価チャート。この1週間で株価が下落傾向にあり、「大統領選があるから株価下がってるんかな?」と談笑しながら、杯を重ねた。

 男性がNISA(少額投資非課税制度)を始めたのは2019年冬。定期預金の積み立てをしようと銀行に勤める友人に相談したところ、NISAを勧められた。何の気なしに、世界中の株式に投資する投資信託を毎月5千円購入し始めた。

 当初は国内外の政治や経済を意識することはなかった。それが22年、ウクライナ侵攻に端を発した世界的なインフレで変わった。電気代やよく購入する冷凍食品は1~2割ほど値上がりし、飲み会の費用も上昇。趣味の音楽鑑賞のチケット代も1割ほど上がった。「物価高で貯蓄だけでは資産が目減りしていくことが怖くなった」

「政治経済の記事読む自分ってスゲー」

 賃貸アパートで一人暮らし、手取りは20万円。月5万円の家賃、食費や光熱費に加え、大学の奨学金380万円も毎月1万6千円ずつ返済する。ユーチューブやSNSで情報を集め、米国株を中心に投資額を毎月5千円から1万1千円まで増やした。

 「長期分散投資が前提」なので、金融相場に一喜一憂しているわけではない。とはいえ、スマホのアプリで毎日欠かさず、資産や株価をチェックする。ユーチューブで金融インフルエンサーのチャンネルを開くようになり、ヤフーニュースで米大統領選と株価に関わる記事があればタップする頻度も増えた。

 周囲の20代後半の友人のなかに政治や経済について興味のある人はほとんどいない。だが、NISAを始めて政治にも関心が広がり、ほとんど行かなかった選挙にも行くようになった。ネットニュースを見たり投開票日当日にユーチューブで各党の話を聴いたりして、10月の衆院選でも一票を投じた。「衆院選や米大統領選、米国経済の記事を読んでいる自分ってスゲーと思って、ちょっと自信になりました」

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