家庭の事情で大学を退学し、将棋への情熱も失った会社員阪本駿さん(25)=栃木県那須塩原市=が、5年半の空白を経て、全国大会出場にあと一歩の健闘を見せた。まだ駒を持つことに迷いがないわけではない。それでも、家族や仲間の期待を感じながら新年度に向けた準備を始めている。
昨年12月に茨城県桜川市で開催された、朝日アマチュア将棋名人戦北関東ブロック大会(朝日新聞社主催)。決勝で敗れた阪本さんは、帰りの車の中で涙があふれた。そのとき、気がついた。「悔しいという感情をまだ自分が持っている。そのことに、ちょっと喜びを感じた」
決勝の相手は、プロ養成機関「奨励会」の最上位・三段を経験し、昨年のアマ竜王戦で全国2位となった実力者だった。「力の差はあったけれど、思ったよりうまく指せた」。今の将棋に欠かせないAI(人工知能)研究は、11月の県大会後に始めたばかり。しかし、食らいつくことができた。
5歳のとき、県内有数のアマ棋士だった父和人さんの影響で将棋を始めた。那須塩原市立三島中学校2年時にアマ将棋の主要タイトル戦の一つ、赤旗名人戦で全国8強入り。文星芸術大学付属高校(宇都宮市)2年時には全国高校総合文化祭の団体戦で優勝を果たした。高い実績を評価され、強豪の立命館大学に推薦で入学した。
実家に戻って就職
だが、1年で実家に戻った…