写真・図版
井手のり子さん

 「富士見通り」から見える富士山の眺望が損なわれるという理由で、東京都国立市で完成間近だったマンションが解体されることになった。富士山が見えるということに、人はなぜ意味を感じるのだろう。「富士見坂」という名の付く東京の坂から実際に富士山が見えるかどうかを調べたことがある「坂の会」会長の井手のり子さんに語ってもらった。

富士山の眺望 さえぎる新築マンションやビル

 東京の坂をめぐり歩く「坂の会」を仲間たちと2001年から運営しています。毎月のように開催してきた坂歩きのイベントは通算210回を超えました。

 「富士見坂」と呼ばれる坂が東京23区内にどれくらいあるのか。会がスタートしたころ、メンバーで手分けして調べてみたことがあります。少なくとも24カ所あるとわかりました。

 でも当時、実際に都心部で坂から富士山がある程度見えたのはそのうちわずか2カ所で、しっかり山容が見えたのは西日暮里(荒川区)の日暮里富士見坂だけでした。新築されたビルなどによって眺望がさえぎられていたのです。

 13年には、その日暮里富士見坂からも富士山は見えなくなりました。原因は、数百メートル離れた場所に建てられた11階建てのマンションでした。

江戸っ子が愛した霊峰 移りゆく坂の名

 富士見坂という場所は、散歩…

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