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エネチェンジの充電装置

 官製ファンド「産業革新投資機構(JIC)」が支援する企業が、JICから約40億円の出資を受けた直後に不適切な会計処理を公表し、株価が急落する事態を招いていた。JICは巨額の含み損を抱えることになったが、損害賠償は請求しない方針だ。公的資金を扱う組織としての対応が問われる。

岸田政権の肝いり政策

 この投資は今年2月にJIC傘下のスタートアップ育成ファンドが、エネルギー関連会社「エネチェンジ」(本社・東京)の第三者割当増資を引き受ける形で実行した。この育成ファンドは岸田文雄政権の後押しで2023年に立ち上げたもので、これが実質的な「第1号案件」だった。

 エネチェンジは東京証券取引所グロース市場上場で、電気やガス料金の比較サイトを運営する。最近では電気自動車(EV)の充電ステーションの運営などにも乗りだし、JIC側はその成長性に目を付けて、出資を決めたもようだ。

 エネチェンジが2月9日に公表した23年12月期連結決算では、売上高が前年比77.4%増の66億円、純損益は12億円の赤字だったものの、自己資本比率は34.6%あるとしていた。だが実際には売上高は3分の2程度で、債務超過だった。

 JIC側は同26日に1株1057円で約380万株(約40億円)を引き受けた。エネチェンジは9日後の3月6日、監査法人との間で会計処理をめぐるトラブルになっていることを公表し、3月末には外部調査委員会を設置して検証すると明らかにした。その結果、株価が急落し、足元では260円前後にまで低迷。JICは30億円近い含み損を抱えている。

監査法人に見破られた「手口」

 エネチェンジの公表資料など…

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