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ディオールを着用したカマラ・ハリス氏。「バー」ジャケットは創始者クリスチャン・ディオールが手がけた代表作のひとつで、現デザイナーのマリア・グラツィア・キウリが軽やかなウールとシルクの混紡素材でアップデートした©AP
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 目前に迫るアメリカ大統領選。民主党候補は女性初の大統領を目指すカマラ・ハリス氏だが、過去に立候補したヒラリー・クリントン氏と比べると、そのファッションが話題にあがることは少ない。専門家は候補者が女性であっても「服装で候補者を批評する時代ではなくなってきた」と指摘する。

 9月10日、フィラデルフィアであった大統領選のテレビ討論会。ハリス氏は、仏ブランド「ディオール」の黒い上着とパンツといういでたちで登場した。上着は、ブランドを代表する定番の「バー」ジャケット。襟には切れ込みがあり、かっちりとしたスーツでありながら、ウエストを絞った柔らかなシルエットが特徴だ。

 8月22日にシカゴで開かれた党大会最終日には、濃紺のパンツスーツ姿。米メディアによると、仏ブランド「クロエ」のものだったという。

 米国の大統領選において、ファッションは重要な要素を占めてきた。その発端となったのが1960年、初めてのテレビ討論会が開かれた時だ。副大統領だったニクソンはグレーのスーツ、上院議員だった若きケネディは体に沿った濃紺のスーツで登場。画面越しに見るニクソンのスーツはぼやけて見えたのに対し、ケネディのスーツは白黒でも映えた。この日を境にケネディは劣勢を巻き返した。

 中でも、過去もっとも服装が注目を集めた政治家はヒラリー・クリントン氏だ。「人生の大半において服装に関心を払ったことはなかった」と自伝で振り返るヒラリー氏だが、ファーストレディーの時から、髪形を何度も変えれば「一つのスタイルにとどまることができない」とその精神状態まで問題視され、パンツスーツを着れば批判されるなど、そのファッションは常に批評の対象になった。自身も政治家になりやがて大統領選の候補となると、力強い赤やクリーンな白の「勝負服」で、「女性のパワー」を強調した。裏では、クリントン氏を支持する米国版ヴォーグ編集長のアナ・ウィンター氏が、アドバイザー役をしていたとも言われる。

定番スタイルのハリス その意図は

 だが、ハリス氏は「色彩を抑…

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