脳波を読み取って伝える装置「マインドウェーブ・モバイル」を使い、おもちゃのヘリコプターを操作しようと試みる男性。米ニューロスカイ社が開発した=ニューヨーク・タイムズ

Your Brain Waves Are Up for Sale. A New Law Wants to Change That.

 いまや消費者は、自分のメールアドレスや交友関係、閲覧履歴、遺伝子データといった個人情報が、日頃使っているアプリやネット上のサービスによって収集され、しばしば転売されるかもしれないことに慣れてしまっている。

 一方で、消費者むけニューロテクノロジー(脳科学を活用した新技術)の出現により、収集されるデータのプライバシー性もますます高まっている。あるヘッドバンドは、利用者の脳活動をモニターし、瞑想(めいそう)の方法をコーチングする。さらに、不安やうつ症状の治療に役立つと称するヘッドバンドもある。ほかにも、ユーザーが出会い系アプリの画面をスクロールしている間に、その人の脳の信号を解読し、より良い出会いを提供する、というヘッドバンドさえある(この商品のメーカーは自社サイトに「心の声を聞く、だけでは不十分」とうたっている)。

 こうした技術を手がける企業は、利用者の脳活動の記録にアクセスできる。私たちのさまざまな思考や感情、意図の基層にある電気信号の記録に。

 米コロラド州のジャレド・ポリス知事は4月17日、こうした個人情報を確実に保護することをめざす、米国初の法案に署名した。州下院で61対1、上院では34対0の賛成多数で可決された新法は、コロラド州個人情報保護法における「センシティブ・データ[sensitive data]」(訳注:個人情報のうち、思想信条、宗教、性的指向、病歴など、特に秘匿性の高いもの)の定義を拡大して、生物学的データや、脳や脊髄(せきずい)、そして全身に指令を出す神経系によって生成される「ニューラルデータ[neural data]」も保護の対象に加えた。

  • 【注目記事を翻訳】連載「NYTから読み解く世界」

個人の特定も可能なばかりか、行動の予測さえ可能になりそうなデータ。新法実現に動いた議員は、情報がどこで利用されるのか「ユーザー自身がコントロール可能」でなくてはならない、とNYTの取材に語ります。

 新法の制定を提唱した科学者…

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