被災者が公的な支援を受ける前提となる罹災(りさい)証明の制度。1月の能登半島地震の被災地では、住宅の被害認定が実態に即しておらず、再建のための支援金も不十分と指摘されている。9月の豪雨から21日で1カ月。地震と豪雨で二重被災した被災者も多く、生活や住まいの再建を後押しする仕組みが求められている。

罹災(りさい)証明書 

災害で被災した住宅を、自治体職員が調査し、被害の程度を証明した書類。全壊、大規模半壊、中規模半壊、半壊、準半壊、一部損壊の六つの区分があり、被災者生活再建支援金の支給、住宅の応急修理や仮設住宅への入居、義援金の分配など、支援策適用の主な判断材料になる。

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 「胸のところまで水が来た。衣紋掛けにつるしていたジャンパーも泥を吸った」。石川県輪島市町野町の大工、川端博さん(83)は、自宅が豪雨で床上約1・2メートルまで泥水につかった。

 昨年10月に妻を亡くし、一人暮らしになったところで元日の地震に襲われた。自宅は瓦がはがれ落ち、周辺は地盤が傾いた。離れて暮らす長女が罹災証明書の申請をしてくれたが、判定は「一部損壊」。納得いかず、再調査を求めたところ、2次調査で「中規模半壊」になった。

地震と豪雨で住宅が被災した川端博さん=2024年10月3日、石川県輪島市町野町、御船紗子撮影

 市によると、市が被害認定調査をした約2万8千件のうち、判定を不服とした2次調査の申請は約4400件に上ったという。

 中規模半壊であれば、最大100万円の被災者生活再建支援金を受け取れる。「支援金で瓦を直し、大工を続けよう」と仕事に取りかかろうとした矢先の豪雨だった。

 地震後、雨漏りするようになり1階で寝起きしていたが、現在は2階で暮らす。電灯のカバーで雨漏りを受け、ふすまで寝床を囲って夜の寒さをしのぐ。近くの中学校への避難を勧められたが、「実家の工務店と仲間の左官と一緒に造った思い出の家やから」ととどまっている。

ブルーシートで覆っただけの屋根は雨漏りするため、2階には、受けるトレーが置いてある=2024年10月3日午後2時50分、石川県輪島市町野町、御船紗子撮影

 豪雨の被害認定調査の結果はまだで、最終的に支援金をいくら受け取れるのかは分からない。それでも、伝統的な瓦や木材を使って建てた自宅を修理するには、かなりの持ち出しが必要になる。

 「家を直して住み続けたい」「解体して仮設住宅に入ろう」。そんな思いの間で揺れている。

地震と豪雨一体で被害を判定 プッシュ型で調査も

 罹災(りさい)証明書の判定…

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