第39回京都賞(稲盛財団主催)の基礎科学部門を、カナダ・ビクトリア大のポール・ホフマン客員教授(83)が受賞した。精密なフィールド調査を積み上げ、生命進化の加速につながる「全球凍結」や、地球科学の根幹となったプレートテクトニクスの活動史を実証した業績が評価された。
――地球表面がほぼ氷に覆われる全球凍結(スノーボール・アース)。仮説として1992年に提唱されていたが、アフリカのナミビアでの地質調査などから、約7.2億~6.4億年前に続けて2回起きたことを明らかにした。約5億2千万年前の動物の爆発的な多様化(カンブリア爆発)につながった可能性がある。
全球凍結は、生命史に非常に影響を与えた現象だが、魅力を感じたのは検証可能な仮説だったから。多くの地質学者たちが調べてきたことを私も検証した。当時の気候がこれまでと全く違うもので、一般的な現象からは説明できないことが起きていたことを確認し、どういえば説明がつくのかを考え、たどりついた。
ほかの地質学者は考えていなかったから、私が全球凍結を説明しようとしたときに、抵抗があるだろうと覚悟していた。実際、ほかの地質学者や古生物学者から批判を受けたが、その反論は未熟だった。彼らは全球凍結が何なのかを十分理解していなかった。
■新しいアイデアは幼い子ども
いつも思うが、新しいアイデアは幼い子どものようなものだ。子どもがどんな大人になるかわからないように、あまり早くに判断すべきではない。
ほとんどの理論について言えるが、最初に提唱されたときに正しくないだろうと思われても、必ずしもそうではなく、未熟で不完全な状態にすぎない。それがある程度熟していき、成長するのに時間が必要で、それを待った上で判断すべきだと思う。
例えば、1912年にドイツ…