
島根県浜田市は新年度、島根県立大浜田キャンパス(浜田市)の学生が地域活動でタクシーを利用した場合(2人以上の乗り合い)に、その費用の一部を助成する方針を固めた。交通の便が必ずしも良くない逆境を乗り越えようとするユニークな取り組みといえそうだ。
乗り合いタクシーといえば、バスや鉄道が不便だったり自家用車を持っていなかったりする「高齢者の足」として運行するケースが圧倒的に多い。市は「大学生を対象にした乗り合いタクシーの助成制度は全国的に例がないのではないか」としている。
市がタクシー費用を一部助成することで、学生の負担は15キロ未満500円、15キロ以上700円で済む。利用は市内限りで、2人以上が1台のタクシーに乗り、地域活動を目的に移動する場合のみだ。市は新年度予算案に助成費として80万円を計上した。
県立大は2021年、浜田キャンパスに地域政策学部を新設した。学生は地域の課題を探り活性化策を検討するため地域に出向き、住民と対話する機会も多いという。ところがキャンパスの交通は便利とはいえず、学生の活動は主要駅前など交通の利便性のいい地域で多くなり、中山間地域を敬遠する傾向にあった。
若者の交通手段の実態を調べた同学部4年の寺迫麟さん(21)は「本当は中山間地で畑作業などを通じた交流を求める学生が多い。今回の予算化で、みんなが(乗り合いタクシーを)どんどん利用し、交流が深まれば若者の定住につながるかも知れない」と話した。
久保田章市市長は19日の会見で、「山間地域の住民は若い学生が入ると喜び、元気になる。昔のお祭りや地域の歴史、食べ物を知ることで、(学生に)何らかのアイデアが浮かぶかも知れない」と期待を込めた。