河村たかし・名古屋市長は4月の記者会見で、「祖国のために命を捨てるというのは、相当高度な道徳的行為だ」と発言しました。20年以上にわたって元将兵らの証言を聞き取り、「戦場のリアル」を研究してきた遠藤美幸さんは、「戦争の現実を知らない浅慮な発言だ」と批判します。発言のどこに問題があるのか、話を聞きました。
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――河村市長の発言をどう見ていますか。
「まず私が問題だなと思ったのは、『高度の道徳的行為』という表現です。戦死者をたたえる、顕彰するという意味が含まれています。命を捨てることが素晴らしい、というメッセージを発しているのです。私は昨年、戦場体験者の証言をもとに『悼むひと』を出版しました。戦死者を悼み、慰霊するのは当たり前の行為で、国がまっとうにやるべきことです。しかし、顕彰することではありません」
「戦場や戦争を知らない、浅慮な発言」
――戦死者を顕彰することの問題とは。
「顕彰は功績をたたえ、広く世に伝えることですね。戦死者を顕彰することは、戦死に対して精神的なよりどころ、礎を与えることで、結局、戦争を準備することにつながっていくのです。戦死者を悼むことは大切ですが、たたえてはいけないと考えています」
――河村発言はそうした認識を欠いている、と。
「率直に申し上げると、戦場…