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朝酌矢田Ⅱ遺跡から出土した縄文時代の資料=松江市大庭町、島根県立八雲立つ風土記の丘提供
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 古代出雲の交通の要衝だった松江市朝酌(あさくみ)地区に焦点を当てたスポット展「あさくみの促戸(せと) 松江市朝酌矢田Ⅱ遺跡の記憶」が、島根県立八雲立つ風土記の丘(松江市大庭町)で開かれている。

 風土記の丘によると、促戸(瀬戸)とは川幅の狭まった場所のことで、奈良時代の地誌「出雲国風土記」では「朝酌促戸(あさくみのせと)」として、宍道湖と中海を結ぶ大橋川周辺の人々の様子が記されている。官営の渡し場は「朝酌渡(あさくみのわたり)」と呼ばれた。この場所は出雲国府から隠岐国に至る古代官道「枉北道(きたにまがれるみち)」と交わり、水陸交通の要衝として栄えた。

 また大橋川北岸にあたる朝酌矢田Ⅱ遺跡では、古代の石敷き護岸が見つかった。朝酌渡に関連する施設があったと考えられており、古代交通を考える上で注目される遺跡だ。

 今回は縄文時代の石器、古代の須恵器、中近世の陶磁器などの資料約30点を展示。この地域が様々な時代にわたって、人々の往来する土地であったことを紹介する。

 斉藤大輔学芸員は「朝酌矢田Ⅱ遺跡の出土品は、出雲国府がつくられた奈良時代の資料が中心だが、実際には中近世の陶磁器も多く出土している。水陸の交通が交わる場所として、時代を超えて機能していたことを感じてほしい」と話す。

 10月28日まで。火曜休館。入館料は大人200円(9月14日~10月28日は300円)、大学生100円(同200円)。高校生以下は無料。問い合わせは風土記の丘(0852・23・2485)へ。(大村治郎)

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