徳島県美波町を流れる全長約16キロの日和佐川は、昔から川遊びやアユ釣りを楽しむ人に愛されてきた豊かな清流だ。

 その下流にある農業用の堰(せき)に、小さな「魚道」が設けられている。1メートルほどある堰の段差を、稚アユなどの小さな魚が越えられずに遡上(そじょう)できなくなっていたのを改善するため、遡上時期に合わせて設置する「可搬魚道」と呼ばれるものだ。

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日和佐川に設置した可搬魚道で観察する研究室の学生ら=2024年9月19日午前10時19分、徳島県美波町西河内、木野村隆宏撮影

 この装置を考案した香川高等専門学校(高松市)の高橋直己准教授(40)=河川工学=と学生らが9月、現場を確認に訪れた。

 「あっ、今、上ってる!」

 堰の壁面に沿って斜めにかけられた幅約50センチ、長さ約3メートルほどの木製の魚道を、小さなハゼたちが次々に上る。その様子を見て、一行は胸をなで下ろした。

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日和佐川に設置された可搬魚道を遡上するハゼ=2024年9月19日午前10時36分、徳島県美波町西河内、木野村隆宏撮影

 「上流に上れれば、大きく育ち、正常に産卵できる。魚道ができるまでは、川が本来持つポテンシャルが生かされていなかった」と高橋准教授は振り返る。

従来の魚道は大がかりで課題も

 魚道とは一般に、農業用や治…

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