川久保ジョイ「The New Clear Age(Dungeness I)」2024年

 気づかないうちに少しずつ、取り返しのつかない影響が蓄積されていく。それは原子力災害の特徴であり、そのほかの社会の諸問題にも当てはまる。埼玉県東松山市の原爆の図丸木美術館で開かれている川久保ジョイさん(1979年生まれ)の個展は、鑑賞者に長い時間軸での思考を促すとともに、複雑な世界のありようを改めて示している。

 2013年、川久保さんは福島第一原発付近で、遮光ケースに入れたインスタントフィルムを埋めた。期間を変えてフィルムを取り出していったのが「10枚のインスタントフィルム」だ。光に当たっていないフィルムは黒いままのはずだが、長期間埋めてあったフィルムほど、放射線の影響か白く色が変わっている。

「10枚のインスタントフィルム」

 この作品をはじめ、展示作品の多くが原子力に関連している。

 日本や世界の原子力発電所を…

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