写真・図版
吉野ケ里遺跡で見つかった石棺墓には、小口石材にも「記号」が彫り込まれていた=佐賀県提供

 弥生時代を代表する大集落、吉野ケ里遺跡(佐賀県)で続く再発掘は、新発見の石棺墓が今夏に埋め戻され、ひと区切りを迎えた。が、石蓋(ふた)の表面に刻まれた無数の不思議な「記号」はいまも研究者を悩ませ続ける。新たな資料の出現や、石蓋がなぜか意図的に割られていた事実も判明し、謎は深まるばかりだ。

 一昨年に始まった10年ぶりの本格調査は、これまで手つかずだった「謎のエリア」が中心。邪馬台国時代と重なる後期の石棺墓に目立った副葬品はなかったが、関心を集めるのはその特異性だ。

 棺を覆う石蓋は三つに割れ、表面には「×」や「キ」といった意味深な記号がちりばめられている。佐賀県文化課によると、石材は記号を刻んだあと故意に分割されたらしい。しかもその3枚のうち、顔上の石は記号を施す面を棺の内側に向け、胴と足を覆う残りの2枚は逆に外側を向いていた。なんらかの意図があるのかどうか、研究者間でも意見が分かれる。

 また、頭上に立てられている石材にも、内側に向かって「×」などの記号が刻まれていることがわかった。もともと石蓋の3枚と同じ石だったようだ。

 記号の群れの正体は何か。夜空の星や天体の反映か? 邪をはらったり霊力を封じ込めたりするまじないでは? 様々な見解が飛び交う。

 「『×』は(悪霊などを寄せ…

共有