「死刑が執行されるのは、だいたいこのあたりです」
案内役の台北拘置所の汪承漢・戒護科長が指し示したのは、黒い土が露出するだけの地面だった。テニスコート半分ほどの広さを、通気口があるだけの簡素な建物が覆っており、天井にかけられたいくつかの電球が、壁に掛けられた仏画を薄く照らしていた。
台湾で最も多くの死刑を執行してきたとされる台北刑務所の刑場だ。
【連載】廃死 台湾から死刑制度を考える
死刑制度は廃止(廃死)すべきだ――。台湾で死刑囚37人が起こしたそんな裁判が台湾でありました。死刑賛成派が多い台湾で、なぜ死刑の是非が問われるのか。現地の関係者を取材して考えます。
汪科長によると、死刑執行を死刑囚に知らせるのは当日の夕方ごろで、執行は夜になることが多い。
刑場の地面が土である理由は
死刑囚は遺言があれば、口述…