救急車に積んである資機材を点検する嶺北消防署員=2024年12月3日午前8時26分、高知県本山町本山、羽賀和紀撮影

 県内のすべての消防本部を段階的に統合し、一体で運用する――。人口減少の進む高知県が、実現すれば全国初の事例となるこんな構想案を公表した。

 構想案では、2028年度に県内すべてをエリアとする「広域連合県消防局」(仮称)を新設。現在15ある消防本部を1本部制とし、五つの「方面消防本部」に改組する。33年度までに通信指令業務も集約化する。

 背景にあるのは、人口減少で消防本部が小規模化して運用が難しくなっていることだ。小規模な消防本部は財政基盤の脆弱(ぜいじゃく)さから、必要な人員や装備が維持できず日々の活動に限界が生じているという。

 消防庁は管轄エリアの人口が10万人未満かつ消防職員が100人以下の消防本部に広域化(統合)を求めている。高知県の場合、15消防本部のうち13本部が該当する。

 特に負担となっているのが救急出動の増加だ。高齢化にともない急病による搬送が増え、県内の救急出動件数は4万212件(21年)と30年で倍増した。自ら病院に行けない単身高齢者が増えていることも影響している。

 医師不足などで救急患者の受け入れができない事例も相次ぐ。

 患者の37%は管轄エリア外への搬送を余儀なくされ、救急車が管内に不在となる時間が長くなっている。一体運用することで初動体制の仕組みを強化できるという。

 小規模な消防本部では、現場に出動する職員が総務部門の業務を兼ねることも多く、本部に一元化することで職員を現場出動に専念させられるとも期待されている。

 県消防政策課の鈴木知基(ともき)課長は、「人口減少が進むなかで将来にわたり必要な消防力を確保していくためには、15消防本部を一元化し広域運用することが必要だ」と一体運用への理解を求めている。

頼みの消防団も高齢化

 「消防サービスを継続するの…

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