
兵庫県の斎藤元彦知事らを内部告発した文書の真偽を調べる県議会調査特別委員会(百条委員会)が、調査報告書の作成に向けた協議を進めている。各会派は、文書が指摘した内容や内部告発への対応など8項目についての評価を10日までに百条委へ提出したが、その見解は割れており、取りまとめは難航するとみられる。3月上旬の報告書完成を目指して協議が本格化するのを前に、三つの項目について、取材をもとに主な4会派の見解をまとめた。
- 斎藤知事らの疑惑は認定できるのか 兵庫百条委、慎重に報告書協議へ
●「公益通報」について
【概要】
県幹部の元西播磨県民局長が昨年3月、斎藤知事らに関する「七つの疑惑」が書かれた告発文書を一部の報道機関や県議に匿名で配布した。知人から文書を入手した斎藤知事は片山安孝前副知事ら県幹部に文書の作成者や目的を調査するように指示。「告発者は西播磨県民局長」とあたりを付け、片山前副知事が本人に聴取して公用パソコンを回収した。県は元県民局長の3月末付の退職人事を取り消し、斎藤知事は記者会見で文書の内容を「うそ八百」、元県民局長を「公務員として失格」と批判した。その後、元県民局長は県の公益通報窓口にもほぼ同じ内容の通報をしたが、県は公益通報窓口の調査結果を待たず、人事課による内部調査で「文書の核心部分が真実ではない」と結論付けた。県は元県民局長をパソコンの不正利用などを理由に停職3カ月の懲戒処分にした。
【自民の評価】
県の元西播磨県民局長(故人)が昨年3月、報道機関や県議の一部に配布した内部告発文書は、外部への公益通報に当たると考えるべきである。不正な目的だったとは判断できないからだ。
文書の調査をせずに作成者の特定を行った県の初動は、公益通報者保護法の体制整備義務違反と考えられる。その後、知事の指示を受けて、前副知事らが調査をしたが、2人とも当事者なので、県以外の第三者に調査を委ねるべきだった。
前総務部長が、元県民局長の私的情報を複数の県議に見せ、文書の価値をおとしめようとしていたという証言がある。「告発者潰し」と言われても仕方のない行為だ。
【維新の評価】
通報対象事実として認定される可能性があるのは、パレード寄付のキックバックであり、真実相当性があるとは言い難いが、最終的な評価は司法が行うべきである。
また、文書を客観的に見た場合、そのほとんどが公益通報に該当しないと同時に、人格を攻撃するような文言が並び、公益通報の該当性について強い疑念が生じるケースだった。しかも、それを判定する手段が通報者の探索以外になかったから、探索は「やむを得なかった」と言わざるを得ない。
【公明の評価】
文書で名指しされた当事者が調査を主導するだけでなく、調査で得た情報をもとに後日、「真実相当性」がなく外部通報に該当しないと主張していることは、公益通報者保護法の趣旨に反する。
知事は文書問題の対応を一切反省することなく、全て適切に対応してきたと自己正当性を強弁している。知事や幹部の不正を告発すると、権力者が自ら告発内容を否定し、通報者を捜して公表し、懲戒処分で通報者を潰すと見られても仕方のない状況にあると言える。妥当ではなかったことは間違いない。
【ひょうご県民連合の評価】
斎藤知事・片山前副知事は、(文書は)うわさ話を集めたもので真実相当性に値しない、不正な目的があるので外部通報には当たらないと言う。
だが公益通報者保護法では、不利益取り扱いの防止や通報者の探索を防ぐ体制整備が求められ、体制整備には真実相当性は問われていない。参考人によると、事業者に対する反感などの目的が併存しているだけでは、不正な目的とはいえないとしており、人事部局からも不正の目的があったと明確に内部で判断をしたということはないと証言もあった。
知事自身が事実でないと決めて県民局長の職を解き、通報者を公表したことは、不適切な対応であった。
●「パワハラ」について
【概要】
県事業に関する報道を受け…