現場へ! デフリンピックが来る(5)
北風が強く吹きつける昨年12月、東京都江東区のグラウンドに約50人の小学生が集まった。今年11月に東京を中心に繰り広げられる聴覚障害者の国際スポーツ大会「デフリンピック」に向けたイベントが開かれていた。
デフサッカーのデモンストレーションでは、選手が足をかけられて倒れ込むと、主審役がサッカーのように笛を吹くのではなく、旗を上げた。別の選手が子どもたちに向け、こう解説した。
「デフサッカーでは選手が笛の音に気づけないので、主審は旗で反則を知らせます」
このイベントは、デフリンピックの主催者でもある東京都が機運醸成を目的に、日本ろう者サッカー協会やサッカーJ1・FC東京の協力を得て、デフフットサル日本代表も招いて開いた。子どもたちはデフリンピックの歴史や簡単な手話を学んだほか、デフサッカーの元日本代表選手らのボールさばきに見入った。
このイベントには、もう一つの狙いがあった。
参加した52人のうち、聴覚に障害のある子が17人いた。特別支援学校にチラシを置いたり、募集要項に「聴者・ろう者混合」と書き込んだりして、聴覚障害のある子が参加しやすいようにしたのだ。
ミニゲームもあり、子どもたちは一緒になってゴールを目指した。健聴者の小学4年生、柘植楓子(10)は「(聴覚障害のある子と)アイコンタクトでやり取りして仲良くサッカーができた」と話した。
都の国際スポーツ事業課で事業推進担当課長を務める八重樫真由美(51)は「大人的な表現をすれば『共生社会』とは何かを学ぶことができる。障害の有無にかかわらず同じことをした、という経験が子どもたちに残るだけでも意味があると思う」と語る。
冊子34万部を都内全小学校に配布
都はこうしたイベントの他に…