報酬改定の現場 訪問介護
訪問介護の事業所が、過去最多のペースで倒産している。今年度の介護報酬改定で、収入を支える基本的な報酬が減額となった影響もあるとみられる。高齢者が増えて介護サービスの需要が高まる一方、提供体制は揺らいでいる。地方における厳しい実情を探った。(吉備彩日)
「これ、おたくが作ったんだっけ?」
「今、一緒に作ったんですよ。味見してみて」
「おいしい。ちょっとポン酢をかけようかな」
新潟市にある一軒家。訪問介護員(ホームヘルパー)の藤田香織さん(35)は、この家に1人で暮らす女性(91)の昼食作りを手伝っていた。女性は認知症で物忘れの症状があるため、週5回、平日の昼前に訪問介護サービスを利用している。
この日の献立は、冷蔵庫にあった野菜の炒め物と、そうめん。女性は慣れた手つきで包丁を扱うが、「塩コショウはどこだったかな」「何をしてるんだったか」と手順を忘れることも。藤田さんは、換気扇をつけたり、使った器具を洗ったりする傍ら、「コショウはこれじゃない?」などと穏やかに声をかけ、女性の調理を見守り続けた。
藤田さんがこの女性の支援で心がけるのは、ヘルパーが何でも代わりにやってしまわない、ということだ。
「『自分でできた』と思ってもらえるような声掛けをして、見守る。自分で作ったこともすぐ忘れちゃうけど、達成感はきっと、心に残る」
藤田さんが所属する訪問介護事業所「ほっと新潟」(新潟市中央区)は、パート職員を含めて18人が働いている。ただ、事業所の経営基盤は不安定で先が見通せないという。
報酬加算、取得できない時も……
背景には、今年度の介護報酬…