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利用者の女性が昼食を作るのを手助けする訪問介護員の藤田香織さん(右)。女性が途中で手順を忘れても、穏やかに声をかけながら一緒に作業を進めた(画像の一部を加工しています)=2024年10月15日午前11時11分、新潟市、吉備彩日撮影
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報酬改定の現場 訪問介護

 訪問介護の事業所が、過去最多のペースで倒産している。今年度の介護報酬改定で、収入を支える基本的な報酬が減額となった影響もあるとみられる。高齢者が増えて介護サービスの需要が高まる一方、提供体制は揺らいでいる。地方における厳しい実情を探った。(吉備彩日)

 「これ、おたくが作ったんだっけ?」

 「今、一緒に作ったんですよ。味見してみて」

 「おいしい。ちょっとポン酢をかけようかな」

 新潟市にある一軒家。訪問介護員(ホームヘルパー)の藤田香織さん(35)は、この家に1人で暮らす女性(91)の昼食作りを手伝っていた。女性は認知症で物忘れの症状があるため、週5回、平日の昼前に訪問介護サービスを利用している。

 この日の献立は、冷蔵庫にあった野菜の炒め物と、そうめん。女性は慣れた手つきで包丁を扱うが、「塩コショウはどこだったかな」「何をしてるんだったか」と手順を忘れることも。藤田さんは、換気扇をつけたり、使った器具を洗ったりする傍ら、「コショウはこれじゃない?」などと穏やかに声をかけ、女性の調理を見守り続けた。

 藤田さんがこの女性の支援で心がけるのは、ヘルパーが何でも代わりにやってしまわない、ということだ。

 「『自分でできた』と思ってもらえるような声掛けをして、見守る。自分で作ったこともすぐ忘れちゃうけど、達成感はきっと、心に残る」

 藤田さんが所属する訪問介護事業所「ほっと新潟」(新潟市中央区)は、パート職員を含めて18人が働いている。ただ、事業所の経営基盤は不安定で先が見通せないという。

報酬加算、取得できない時も……

 背景には、今年度の介護報酬…

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