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あいち国際女性映画祭2024の合同記者会見に出席したナカムラサヤカ監督(右から3人目)ら=2024年9月4日、名古屋市東区、川西めいこ撮影
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 女性監督による作品、女性に注目した作品を集めた国内唯一の国際女性映画祭「あいち国際女性映画祭2024」が5日、名古屋市内で始まる。29回目を迎える今年は、依存症など女性を取り巻く社会課題をとらえた作品が多いのが特徴。世界初・日本初の公開作品を含む36作を上映する。8日まで。

 開幕を控え、監督や出演者などが4日にウィルあいち(名古屋市東区)で合同記者会見をした。

 運営委員会の木全純治ディレクターは「来年の30周年に向けて、この映画祭が本気で女性を支援しようとしていると感じてもらえれば」と話す。

 今回は社会問題を扱った作品も多く、「99%、いつも曇り」もその一つ。発達障害傾向にある中年女性を自ら主演し、監督した瑚海(さんごうみ)みどりさん(52)は人それぞれ違う生きづらさがあるとして「悩みが一つでもあればぜひ見に来てほしい。みんなで悩みを分かち合いたい」と語る。

 依存症からの回復がテーマの「アディクトを待ちながら」に出演した俳優の青木さやかさん(51)は、自身もギャンブルに依存していたことを公表している。「ドキュメンタリーよりもリアリティーがある映画。依存症とは何かをまず知ってもらえれば」と話す。

 会場はウィルあいちとミッドランドスクエアシネマ2(同市中村区)。

 当日券は1300円(障害者、3歳以上の子ども、学生は600円)。詳細はサイト(https://www.aiwff.com/2024/別ウインドウで開きます)。期間中には監督・出演者のトークイベントもある。(川西めいこ)

海外の作品も、その内容とは?

 あいち国際女性映画祭2024が世界初上映となる韓国映画「ジンセン・ボーイ」。

 主人公は、詐欺師のジェニー。不老長寿の効果がある高麗人参酒を盗もうと山奥の老人を訪ねたことから、彼女の人生が変わるストーリー。俳優のカン・ジヨンさんがジェニーを演じた。

 山奥の家族との出会いをきっかけに、主人公は心を閉ざしていた自分から、素の自分へと変わっていく。

 「自分は明るく生きているタイプ」というジヨンさん。映画の前半では孤独な暗い印象の女性として描かれており、キャラクター作りが大変だったという。そんなジェニーの変化は、たくさんの洋服にも見て取れ、映画の注目ポイントだという。

 「最初はブランドものに身を包んで素の自分を隠しているけど、山奥でださい服を着ることでジェニーは本当の自分も取り戻していったと思う。あたたかい、おもしろい映画です」と語った。

 邦画の「99%、いつも曇り」は、アスペルガー症候群の傾向にある中年女性が「子どもを産むこと」について悩みながら行動し、産まないことを選択するストーリー。瑚海(さんごうみ)みどりさんは監督、脚本、編集、プロデューサー、主演をすべて務めた。

 瑚海さん自身も過去に知人からアスペルガー症候群を指摘されたことがあり、自分に近い作品をとテーマに選んだ。

 「一人ひとり違う生きづらさを抱えていることを知って、悩みがあるのは自分だけじゃないと思ってもらえれば」

 子どもを産むことにはスポットライトが当たりやすいが、「産まないこと」には光が当たりにくい。子どもを産まない選択をする女性もテーマの一つだという。

 瑚海さんは「自分の人生について他人がどうこう言うべきじゃない。自分が生きやすいと思える道へ一歩踏み出して、それぞれが自分の人生の主役であってほしい」と思いを込めた。

 依存症患者やその家族がゴスペルコンサートを通して回復する様を描いた邦画「アディクトを待ちながら」には、タレント・俳優の青木さやかさんも出演。自身もギャンブルに依存していた過去がある青木さんは、「日常生活で味わえない興奮状態を味わえてしまうのがギャンブル。それを超えるものがないから抜け出せないんだと思う」と振り返る。

 ナカムラサヤカ監督は、この作品の前にギャンブル依存症に関する短編映画を7本作っていた。

 その際にギャンブル依存症問題を考える会や自助グループへ取材し、当事者が実際に言われた言葉などを、今回もそのままセリフに使った。また、依存症当事者や家族も出演していて、リアリティーにあふれる。

 青木さんは、作中で「芸能人は逮捕されても復活できていいよね」というセリフを役柄として述べたという。作品完成後に映画で自らの言葉にふれ、「町を歩いていたら聞こえてくるようなありふれた言葉で、こんなに傷つくんだと感じて勉強になった」という。

 ナカムラ監督は「依存症はいつ誰がなってもおかしくない病気。我がこととしてみてほしい。最後の15分にはとっておきの仕掛けがあるから楽しみにみてもらえたら」と話した。(川西めいこ)

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