沖縄季評 山本章子・琉球大学准教授
今年は戦後80年。本土では、1947年に日本国憲法が施行され、56年には政府が経済白書で「もはや戦後ではない」と宣言、60年に日米安保条約が改定された。他方、72年まで米軍占領統治下にあった沖縄には憲法も安保も適用されず、63年には占領米軍トップのキャラウェイ高等弁務官が「沖縄の自治権は神話」と演説した。戦前と比べれば経済成長率は高かったが、本土との経済格差は大きく開く。
米軍統治下の沖縄には45年4月1日現在つまり戦前の日本の法令が適用されていた。これに加え米軍の命令と、住民の自治政府および議会が制定した法令の3本柱にもとづいて行政が行われた。しかし沖縄戦で戦前の法規書はすべて焼失、住民が米軍と交渉する際に示せる法的根拠がない状況だった。
沖縄住民のために61年、16年前の日本国法令を復刻して『琉球現行法規総覧』を編纂(へんさん)したのが第一法規出版(現・第一法規)という本土の出版社だ。かつて私が編集者として勤めた出版社でもある。全14巻、1万2020ページからなる沖縄唯一の総合法規書は復帰まで自治の武器となった。
社史にその刊行経緯が書かれ…