棋士たちの肉声を伝える連載「囲碁よ」。今回は前期名人戦リーグで一力名人と挑戦権を争った余正麒八段(29)に話を聞いた。

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 一昨年の12月8日、王座戦最終局で井山裕太さんに負けた夜のことは忘れません。

写真・図版
ポーカーフェイスのようでいて、おちゃめな一面ものぞかせる余正麒八段=2024年10月10日午後2時54分、大阪府守口市、北野新太撮影

 許家元君(九段)と李沂修さん(八段)が応援に……本当に応援かどうかは分からないけど、来てくれていて、対局場の私の部屋で朝まで一緒に過ごしました。

 いろいろしゃべったり温泉に入ったりトランプをしたりして楽しく過ごしました。

 たぶん……ひとりでいたら……僕は泣いていた。泣いてしまっていたと思います。

 王座戦は五番勝負の第2局から連勝して、たぶんいけるだろうなって正直思ったんですけど、第4局から連敗して届かなくて……。

 あれからちょっと碁と離れたくて、4日くらい碁石には触れなかった。

 離れたくて、触れたくなくて…

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