自宅(右)を見つめる吉尾圭子さん。海岸からの距離は約200メートルで、「地震で家が潰れたら、津波から逃げられない」と話す=2024年4月19日、高知県黒潮町、千種辰弥撮影
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 住宅約2万8千棟が全半壊し、245人が死亡した能登半島地震。犠牲者の多くが建物の下敷きになったとみられ、耐震補強の重要性が改めて明らかになった。南海トラフ地震で大きな被害が想定されている地域には、高齢化が進み、耐震化率の低い地域もあり、いかに耐震化率を上げるかという課題に直面している。

 「こんな思いをするなら、もっと早く耐震補強をしておけばよかった」。震度6弱の揺れが愛媛県と高知県を襲った今月17日の地震後、同県黒潮町の花卉(かき)農家、吉尾圭子さん(69)はそう語った。自宅は築50年近い木造2階建て。就寝中だった2階で跳び起き、ベランダの柱にしがみついて収まるのを待ったという。

 黒潮町は、国が2012年に公表した南海トラフ地震の被害想定で、最大で震度7の揺れに見舞われ、全国最大となる高さ34メートルの津波に襲われると想定されている。吉尾さんの暮らす田野浦地区の自宅周辺では、津波が10~15メートルに達するとされる。

 これまでは、工事の費用や内容が分からず、耐震補強に踏み切れなかったが、能登半島地震を受けて3月、耐震診断士の派遣を無料で受けられる町の事業に申し込んだ。費用や内容を確認したうえで、工事しようと考えていた矢先に、今回の地震が起きた。「夫は病気の後遺症で速く歩けない。耐震補強で家が崩れないようにして、すぐに屋外に出て避難できるようにしたい」

耐震化率、補助額アップで20ポイント上昇

 町では国の被害想定を受け…

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