地方住宅供給公社の賃貸住宅の家賃に、借り主が「減額を請求できる」などとする借地借家法の規定が適用されるかが争われた訴訟の上告審で、最高裁第一小法廷(深山卓也裁判長)は24日の判決で、「適用される」との初判断を示した。適用されないとした一、二審判決を取り消し、審理を東京高裁に差し戻した。裁判官5人全員一致の結論。
住宅供給公社は、都道府県などが出資し、住宅が足りない地域などの住環境整備のため住宅の整備・管理などを行う。地方住宅供給公社法は施行規則で、物件の家賃は公社が近隣の家賃状況や経済変動などを総合勘案して決定できると定める。一方で借地借家法には、賃料が不相当な場合は当事者が家賃の増減を請求できるとの定めがある。
この訴訟では、神奈川県内で約1万4千戸を管理する県住宅供給公社が2004~18年、月額の家賃を最大約5万6千円から段階的に3万円程度上げたことに対し、住民側が借地借家法に基づく減額などを求めた。一審・横浜地裁と、二審・東京高裁の判決は、公社法の規定が借地借家法の規定に優先されるとして、住民側の請求を退けた。
しかし第一小法廷はこの日の判決で、公社法の規定は、「公共的な性格を持つ公社が、賃貸業務を行う際の規律を補完的に定めたものだ」と指摘。借地借家法の定めとは別に公社に家賃の決定権を与えたとは解釈できず、公社の家賃でも減額を請求できると判断した。高裁で改めて、公社の家賃増額が適正だったかなどが審理される見通し。
住民側の代理人弁護士は「神奈川県以外の公社にも影響する判決。都市再生機構(UR)にも法律に同様の文言があり、URの賃貸住宅にも影響する可能性があるのでは」と話した。(遠藤隆史)