東京都世田谷区の保坂展人区長は8日、記者会見を開き、建て替え工事が遅れている区庁舎について、当初計画から1年7カ月遅れとなる2029年6月の完成を目指す、と発表した。施工する大成建設が示していた完成見通しから3カ月近く短縮した。一方、損害賠償については区と同社で見解が食い違っている点があり、今後、裁判や調停に発展する可能性もある。(原田遼)
区は7月、「完成が当初の予定より1年10カ月半遅れる」との同社の申し入れを受けて、専門家を交えた検証委員会を設置。全3期の工期のうち未着工の2期以降、1日の作業時間を延ばすことや、区道を資材置き場として使うことなどを同社に提案し、短縮の見通しが立った。さらに設計の変更などで約1カ月の短縮も検討しており、来年3月をめどに工期を確定させる。
一方、違約金は契約に基づき、8カ月の工期延長が確定している1期だけで7億7800万円と算定。2~3期分は工期が定まり次第、算定する。区は違約金とは別に工事中に使う仮庁舎のビルの賃料や、完成後に想定していた庁舎スペースの貸し出しの収入などを損害賠償として請求する方針だ。
しかし同社は「損害分は違約金に含まれる」と主張しており、両者で契約の解釈に隔たりがある。保坂区長は「協議がまとまらなければ、第三者判定も選択肢になる」と指摘。訴訟や建設業法に基づく紛争審査会に申し立てることも示唆した。