その驚くべき選択は、実際の打牌(はい)には表れなかった。パイレーツ・仲林圭は思いついたが、悩み、止まり、最終的に別の道を進んだからだ。
それでも、実況の日吉辰哉プロは「うーわ、えらい」と感嘆の声を上げた。選択肢があると示したことこそが、トッププロの証しだった。わざと相手に点数を差し出す「差し込み」という高度な一打を。
元Mリーガーの朝倉康心プロは「基本的にミスが少なく、普遍的な強さがあるのが仲林さん。それに加え、読みの鋭さを生かしてたまに見せる、教科書通りではない発想がすごい。打牌に表れなくても、水面下の思考を考えるのが楽しいプレーだった」と振り返る。
牌図はアベマズ・松本吉弘、パイレーツ・仲林、ドリブンズ・鈴木たろう、サクラナイツ・渋川難波による4月8日の第2試合東3局1本場15巡目。供託棒が2本あるほか、親の鈴木からリーチ棒も出ている。
この試合は東1局に松本がアガリを重ね、他の選手を突き放す展開になった。仲林らは現実的に2着狙いに切り替えて進めていく。
朝倉プロは「点数に差の無いたろうさんが親でリーチをかけてきた場面。慎重にオリるのが普通の手順だと思うが、アガられるとラスの確率が上がってしまうので悩みどころ。ここで松本さんへの差し込みを考えたのがすごい」と語る。
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では、松本は何を待っていそうか。探るために、河を見ていく。
松本は、10巡目に7ソーを…