人口減社会の中、私たちはどんな考えを持ち、どう行動していけばいいのだろう。旧産炭地の町工場で、宇宙開発にも取り組んでいる北海道赤平市の植松電機の植松努社長は、「『どうせ無理』を無くしたい」と、人の自信と可能性を奪わない社会を目指したロケット教室や講演活動もしている。将来へのヒントを聞いた。

減る人口と置き換わるAI・ロボット

 国立社会保障・人口問題研究所が2023年12月に公表した将来推計人口によると、北海道の人口は20年の約522万人から、50年には約382万人と、約7割に減少する。働き手の中心である15~64歳の人口は20年の299万人から、50年には187万人になる見通し。野村総研が15年に発表した英オックスフォード大などとの共同研究では、10~20年の間に日本の労働人口の49%がAIやロボットに技術的に代替可能だとの推計もあり、人間に求められる仕事は変わっていく。

 「父は芦別市で車や大型機械の修理をする仕事をしていました。家業を継ぐため北海道に帰ってきた90年代半ば、炭鉱が閉山になり、街からどんどん人口が流出し、それまでの仕事がなくなりかけていました」

 「そんな中、重機が動き回る建築物などの解体作業場で、たくさんの人が鉄筋コンクリート破片から鉄くずを回収していたのを見たんです。危険な仕事だと思いました。事故も起きていたようでした。何とかしてあげたいと思い、パワーショベルに取り付ける金属回収用のマグネットを開発しました。これが使い勝手が良いと、どんどん普及していきました。それまでそんな製品がなかったからです」

 「これが現在、我が社の経営の柱の一つになっています。『困ったことを解決しようとすれば仕事になる』と学びました」

 「人口増の時代は、成功している人のまねをすればよかった。仕事は増えていくので、働く人は余計なことを考えず、目の前の仕事をキチンとこなすことが求められました」

 「ところが人口減社会は違います。市場は小さくなるばかりなので、今まで通りのやり方では仕事は減っていくだけ。人と違う、新しい仕事や価値を生み出さないと、これからは厳しいと思います。それには不便や困っていることを解決したいという『優しさ』がヒントになると思います」

 「教育面でも今までと同じことは通用しなくなります。人口増の時代は、知識の量や、言われたことに従順に従う人材を育てて、社会に送り出せばよかった。しかし、暗記できる量と正確さを求める今までの教育では、これからは人工知能(AI)やロボットに確実に負けます」

「ちょっとの自信で人間って変わる」

 「現在、僕は、学校を対象に…

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