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稲穂のあいまを歩いて雑草を取る格闘

記者コラム 「多事奏論」 編集委員(天草)・近藤康太郎

 「近藤さん、稲刈りはいつですか?」

 実りの秋、慎太郎(43)が聞いてきた。全国巡業している読者様相手のアロハ文章教室で、ロードマネジャーを務める販売局の男。いつもは気の利かない唐変木で、決してこんなことを自分からたずねてくるやつではない。

 令和の米騒動で、スーパーから米が消えた。何株か稲刈りのまねごとでもして、アロハ米のおすそ分けにあずかろうという腹だ。身長185センチ、体重100キロ、元ラガーマンの体力は欲しくはあるが、その手は食うか。

 素人さんは、苗を植えりゃ稲穂に育って米になる、くらいに思っているだろうが、とんでもない。田植え後もタニシ駆除に真夏のあぜ掘り、雑草取りと、地味仕事がごまんとある。わたしのような小さな棚田では、草払い機をぶん回さなければ田の見回りさえできない。近隣は耕作放棄の雑草ジャングルだ。もみすりに精米にと、計600キロ超の米袋をかつぎ、長い距離の段差を歩いて、何度軽トラに上げては下ろしを繰り返すことか。

 文章教室では、「人はなぜ働…

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