児童養護施設で働く坂野京香さん(25)には、2歳年下の妹がいた。
脳腫瘍(しゅよう)と闘い、4年前に18歳でこの世を去った春香さん。
春香さんの脳腫瘍が見つかったとき、京香さんは中学2年生だった。
激しい頭痛に襲われて嘔吐(おうと)し、「目が見えない」と叫んで救急搬送された春香さん。
左頭頂葉に6センチの腫瘍が見つかり、手術を受けた。
医師から「スーッときれいに取れました」と言われたが、病理検査で膠芽腫(こうがしゅ)と判明。
脳腫瘍の中でも悪性度が高く、「10年生存率は0%」と告げられた。
父・貴宏さん(53)と母・和歌子さん(51)は、このことを京香さんには伝えていなかった。
だから京香さんは「手術して良くなったんだ」と思っていた。
姉妹というより親友だった
6年後、京香さんが大学生の時に、妹の脳腫瘍再発が判明。
2度目の手術は「覚醒下手術」を行うことになった。
頭蓋骨(ずがいこつ)を開けた状態で麻酔から覚まし、言葉をかけながら腫瘍を取るという手術だ。
難しい手術とは聞いていたが、「前も手術で良くなったから今回も大丈夫」と信じていた。
手術は無事に成功したが、右半身に麻痺(まひ)が残り、障害者手帳を取得。
大好きだった絵も右手で描けなくなり、慣れない左手で絵筆をとるようになった。
退院してしばらくして、世間はコロナ禍に見舞われる。
しかし、そのおかげで家族4人で過ごす時間が増えた。
近くの公園を散歩したり、トランプやUNO、「はぁって言うゲーム」を楽しんだり。
自宅でたこ焼きを焼いたり、姉妹でLINEスタンプを作ったりもした。
姉と妹で一緒の部屋に寝て、京香さんがアルバイト先で起こった嫌な出来事について話した時のこと。
春香さんが「大事なうっちゃん(京香さんの愛称)にそんなことするなんて許せない!」と本気で怒ってくれたことがあった。
姉妹というよりは友達、いや、親友と呼べる関係だった。
亡くなる半年前にくれた手紙
2020年6月、京香さんは21歳の誕生日を迎えた。
プレゼントについて、春香さんは「うっちゃん、私は手紙にするね」と言っていた。
当日渡された手紙は、便箋(…