新語・流合語から探る中国 八失人員

【連載】新語・流行語から探る中国

受験や結婚といった人生の転機や、経済やライフスタイルの変化を、中国の人びとはワンフレーズの漢字で巧みに表現しています。そんな新語・流行語が映し出す、中国社会のいまを読み解きます。

  • 【連載の狙いは】中国は探す、自らを表現する言葉を バズワードが映す社会の曲がり角

 昨年末、中国・広東省に暮らす日本人男性は警察署を訪れた際、警察官から声を掛けられた。「あなたの住む地域は治安が悪く、日雇いの人が多くいるので安全に気をつけてください」

 秋以降、広東省では公共の場所での殺傷事件が相次いでいた。9月に深圳市で日本人学校の男児が刃物で刺され死亡、10月に広州市で小学生ら3人が切りつけられる事件があった。11月には珠海市で男が車を暴走させ、35人が死亡、43人が負傷した。

 中国政府は外国人が被害者になることに敏感になっている。そうした事件に巻き込まれないよう、警察官なりの配慮だったのかもしれない。だが、男性の耳に残ったのは「日雇いの人が多いので気をつけて」という言葉だった。

中国・広東省東莞市の簡易宿泊所街。日雇い労働者が暮らす宿やネットカフェが並ぶ=2024年12月3日、小早川遥平撮影

「三低三少」

 所得・地位・人望が低く、人付き合い・社会との触れ合い・不満のはけ口が少ない――。そんな人物を指す言葉がいま、中国でにわかに注目を集めている。

 一般市民にはそれほど浸透していない。伝えたのは、香港メディアだ。星島日報は、珠海での車の暴走事件後、広東省の多くの地域で「三低三少」の人物を洗い出し、報告するよう行政の末端組織に指示が出たと報じている。

ひそかに監視、他にも

「三低三少」と並んで、報告すべき対象に挙げられたのが「八失人員」です。どのような人たちでしょうか?

 珠海の事件は中国国内でも報…

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