コラム:中国「戦狼外交」修正か、西側敵視の強硬派退場 | ロイター

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[香港 10日 ロイター BREAKINGVIEWS] – 中国政府が強硬派の趙立堅・外務省副報道局長からマイクを取り上げ、他部署に異動させた。中国は最近、態度を軟化させる行動が続いており、オーストラリア、日本、米国を含む主要貿易相手国との緊張関係が雪解けを迎えようとしている。もっとも、「戦狼」外交官と呼ばれる趙氏らが損なった中国の外交上、経済上の利益を修復するには何年も要するだろう。

 1月10日、中国政府が強硬派の趙立堅・外務省副報道局長(写真)からマイクを取り上げ、他部署に異動させた。北京で2022年3月撮影(2023年 ロイター/Carlos Garcia Rawlins)

職業外交官らは趙氏の異動に大喜びするはずだ。口さがない趙氏はこの3年間、メディア向けの説明会で西側敵視の発言をまき散らし、新型コロナウイルスを巡る陰謀論に加担してきた。今回の異動は、書面上は降格に当たらないものの、実質的には趙氏を黙らせる人事だ。これに先立ち中国は駐米大使だった秦剛氏を外相に起用。秦氏は既に米国との関係改善を呼びかけている。

ただ、趙氏が更迭された正確な理由はまだ明らかになっていない。同氏の妻は中国がロックダウン(都市封鎖)の最中だった昨年11月末、欧州での暮らしについて熱く語るブログを投稿して国内ソーシャルメディアで「プチ炎上」した。

趙氏はまた、ロックダウンを巡る中国主要都市での抗議活動についてロイターの記者に質問された際、回答を用意しておらず答えられない姿をさらして嘲笑(ちょうしょう)を買った。

中国の穏健派は、「戦狼外交官」らの無能さを批判してきた。例えば習近平国家主席に対する米国の不満を強硬派が過小評価した結果、中国企業は相次ぐ関税や制裁、禁輸措置などのあおりを食らった。過激な反米主義を掲げるあまり、米国が今にも崩壊すると想定してしまった。こうした「希望的観測」に基づき、多くの強硬派はロシアのウクライナ侵攻に際しても、ロシアが痛みも無く速やかに勝利すると信じていた。

趙氏のような強硬派の昇格と時を同じくして、中国への外国直接投資(FDI)の質は低下。雇用を創出するプロジェクトが減ってFDIを装う投機資金が増えた。政府が欧州連合(EU)欧州議会の議員に厳しい制裁を科したせいで、EUとの投資協定が結べなくなった。

ウクライナ戦争で西側が武力に訴えずに民主主義の底力を見せつける一方で、中国の新型コロナウイルス封じ込め策は崩壊し、経済は疲弊(ひへい)している。戦狼たちの雄たけびが静まったのも無理はない

もっとも、中国の政策は両極端に振れる繰り返しだ。ねぐらに帰らされた狼たちは、必ずや再び姿を現すだろう。

●背景となるニュース

*中国外務省の趙立堅副報道局長が、国境問題を担う国境・海洋事務局の副局長に異動した。趙氏は「戦狼」外交官の中で、最も歯に衣着せぬ存在として有名だった。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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