ロシアの情報機関、連邦保安局(FSB)は12日、2014年に併合したウクライナ南部クリミア半島とロシア本土を結ぶ大動脈クリミア橋を攻撃したテロ容疑などで、南部や首都モスクワ近郊のウクライナ人ら計10人を拘束した。ウクライナの情報機関の指示に基づく犯行と主張している。プーチン大統領の10日の演説に基づき、ウクライナへの攻撃を強めるための情報工作の可能性もある。
タス通信によると、FSBはウクライナのブダノフ軍情報局長がクリミア橋爆破事件を首謀したと分析。ロシア南部で活動していたロシア人、ウクライナ人、アルメニア人の計8人を拘束した。ウクライナ南部とブルガリアを経由し爆発物を運んだとしている。
国営ロシア通信は同日、ブダノフ氏が「米国の特殊部隊のために働いている」と報じ、爆破事件に米国も関与したとの見方を示唆した。ウクライナ国防省は軍情報局の関与を否定した。
FSBはモスクワ郊外と、ウクライナに隣接するブリャンスク州でも、ウクライナ人男性1人ずつを拘束。モスクワ郊外の男性は、テロに使う対空ミサイルをウクライナから運び込んだ特務機関の工作員で、テロ計画を「自白」したとされた。ブリャンスク州の男性は、物流施設で爆破テロを準備した容疑がかけられ、現地の裁判所が2カ月間の拘束を認めた。
プーチン氏は10日、クリミア橋爆破を「ウクライナの特務機関によるテロ」と断定し、ウクライナ全土をミサイル攻撃した理由に挙げた。「ロシア領を攻撃する試みが再びあれば厳しく臨む」と宣言し、今後もウクライナの反撃を口実に攻勢を強める恐れがある。
プーチン氏は12日にも、天然ガス輸送管ノルドストリームが損傷した爆発事故について「欧ロ関係を崩し、欧州の市場を制圧しようとする勢力が行った」と述べ、米国やウクライナが関与したとの自説を披露した。欧米はロシアが関与したとの見方を強めている。