10月27日の衆院選では、自公政権が大敗し、15年ぶりに過半数を割り込みました。今後、政権運営を安定させるために、連立政権の枠組み拡大も模索せざるを得ない状況です。ただ、世界を見渡せば、第1党が過半数に届かない例は多数あります。今後、日本政治はどこへ向かうのか。ヨーロッパ政治に詳しく、比較政治が専門の同志社大・吉田徹教授に聞きました。
- 連載「今さら聞けない世界」
選挙で決着つかない傾向、世界でも
――今回の選挙結果をどう評価していますか。
「誰も勝てなかった選挙」というのが特徴だったのではないかと思います。過半数確保という目標を自民・公明両党は達成できず、政権交代を掲げた立憲民主党も、その道筋が固まっているわけではないからです。選挙があっても議会で多数派が生まれるとは限らない状況は、近年のフランスやイタリア、スペイン、ポルトガルなどでも見られます。日本も「選挙をしても多数派が作り出せない」という最近の傾向と軌を一にしているように見えます。
――なぜ難しくなっているのでしょうか。
背景には既成政党の衰弱があります。日本でも、今回は共産党や公明党など、これまで支持基盤が強固だった政党ほど、得票率を大きく減らしています。その分、国民民主党のような比較的新しい政党が躍進しました。日本を含め、戦後の政党政治は、地域や(労組や業界団体などの)中間団体が政党を組織で支えることで安定していましたが、高齢化や個人化で伝統的な組織は空洞化しつつあり、これが安定した政党政治の維持を難しくしています。
――多数派をつくるために、今後どういう動きになるのでしょうか。
与党が過半数を割った場合、一般的に「政策」と「数あわせ」を考慮して連立を組もうとする、というのが政治学の連合理論の定説です。つまり、与党と政策が最も近く、かつ少ない数で過半数を達成できるのが最も選ばれやすい連立パートナーということになります。逆に連立パートナーの議席を合わせて過半数を大きく超えてしまうと、影響力が低下してしまうことになります。
そうした観点からいうと、自公にとっては28議席をとった国民民主党がベストなパートナーで、次善の策が38議席の日本維新の会との連立、ということになるでしょう。もちろん、これは相手あってのことですから、不安定な少数派内閣を選択せざるを得ないこともあるでしょう。
――他の国ではどうなってい…