確定死刑囚だった袴田巌さん(88)が今年9月、再審無罪になった。誤判で命を奪いかねない実態が改めて表面化し、日本の死刑制度の是非が再び問われている。死刑廃止を求める活動を続け、袴田さんとも交流があったイタリアの元下院議員、マリオ・マラッツィーティさん(72)に世界の現状などを聞いた。
- 無実なのに死刑、不正義の現実 袴田さん無罪で「制度維持できない」
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袴田さん「再審無罪」が示したこと
――袴田さんと会ったことがあるそうですね。
(10年前に)袴田さんが釈放された後、死刑制度をめぐる集会などで複数回会った。(拘禁反応の影響で)「闇の帝王」「善悪の闘い」などと話していたのが印象的だった。理解しがたい形ではあるが死刑囚の現実を語っていたように感じた。
――再審無罪をどう受け止めましたか。
袴田さんを長く信じ、支えた人々のことを思うと非常にうれしい。袴田さんには、人生の温かさというものを改めて感じて生きて欲しい。
一方、日本でも司法制度が間違い(冤罪(えんざい))を認め、正すことが構造的に難しいことを示したと言える。司法制度は完璧ではなく間違いは起こる。刑罰は可逆的でなければいけないが、死刑は取り返しがつかない。司法制度の改善をはかりつつも、少なくとも執行は停止すべきだ。
――世界の現状は。
廃止国が増えている。近年ではモンゴルなどが廃止した。死刑執行の停止を求める国連総会決議への賛成国は、初年の2007年は104カ国だったが、先月は131カ国になった。
――死刑を残す主要国としては米国があります。
執行数は減少傾向にある。99年は年間98件だったが、昨年は20件ほど。半数以上がテキサス州とフロリダ州であり、執行しているのは少数の州だ。
ただ、トランプ前大統領は前…