岩手県大船渡市の綾里(りょうり)漁港で、養殖ワカメの収穫が大詰めを迎えている。漁船から水揚げされたワカメは釜で湯通しされると、茶色から鮮やかな緑色に変わった。
岩手、宮城両県で生産される「三陸ワカメ」は国産養殖ワカメの7割を占め、毎年2~4月が収穫期だ。だが近年、担い手不足や温暖化による海水温の上昇などで生産量が落ち込んできた。
そんなワカメ生産の支援に取り組む企業もある。「理研食品」(宮城県多賀城市)は陸上の水槽で育てたワカメの種苗を漁業者に販売。大きく育った後に買い取る取り組みを2017年から始めた。すでに芽が出ているため、沖に出してすぐに枯れる「芽落ち」を防ぐことができるという。また、早生(わせ)と晩生(おくて)の品種を組み合わせて収穫期をずらすことで限られた人手で収穫量を維持できる。
同社の佐藤陽一原料事業部長は「今後も漁業者による長年の経験とノウハウに、科学的なアプローチを加えることで海藻養殖の安定的な生産を支援していきたい」と話す。
海藻は健康志向の高まりや持続可能な食料生産に向けた取り組みとして、特に欧州で注目を集めている。日本は伝統的にさまざまな海藻を食べてきた「海藻大国」のため、多くの研究者らが視察に訪れる。
国際海藻協会のエレーナ・アブリュ会長は大船渡市の漁港を視察するため、ポルトガルから来日した。「欧州では海藻を食べることにまだ抵抗がありますが、世界全体で持続可能な食料を確保するためには、海での養殖を増やすしかない。我々は海藻の調理法を理解し、学ぶ必要がある。持続可能で、効率的で、品質と安全性の高いワカメを生産する日本の現場から多くのことを学べた」と話した。