
4月開幕の大阪・関西万博に、ひときわ目立つ巨大な球体が展示される。環境に優しい未来の農業と養殖を詰め込んだとされる「アクアポニックス」。地球の生態系に似た循環型の生産システムを構築し、魚や野菜を育てる仕組みだ。資金難で完成が危ぶまれたが、ある女性が3億円を寄付して道が開けた。何が女性を突き動かしたのか。
- 激変する世界、日本の停滞 安藤忠雄さんが考える万博の意味とは
2月4日、小雪舞う夢洲(大阪市此花区)の会場を、会社役員の前田葉子さん(82)=大阪市=が訪れた。地球と植物工場をイメージした球体の中は、レタスやトマトを育てるトレーが並び、試験的に投入されたニシキゴイが水槽内を泳ぐ。
前田さんは球体を見上げ、「多くの子どもたちがこれを見て『未来』を感じてワクワクして欲しい」と目を細めた。
アクアポニックスは、水産養殖(アクアカルチャー)と水耕栽培(ハイドロポニックス)を組み合わせた造語。魚介類が食べ残したエサや排泄(はいせつ)物を微生物が分解し、それが水中で循環して植物の栄養素になる仕組みだ。
この展示は、大阪府・市が関わる大阪ヘルスケアパビリオンの前に設けられる。魚を養殖する高さ約1メートルの水槽の上に、野菜を栽培する直径約7メートルの球体が載った形で、「いのちの湧水(いずみ)」と名付けられている。
育てた魚や野菜、「未来の食」として提供
球体の内は4層に分かれ、植…