6月8日の米ニューヨーク。薄暮に包まれたヤンキースタジアムのスタンドは、地元の大観衆で埋まっていた。観客は大谷翔平を擁する大リーグ・ドジャースとヤンキースのプレーボールを待ちわびている。
その試合の始球式でマウンドに上がったのは日本人だった。
ジーンズにヤンキースのユニホームを羽織った南壮一郎(48)が大きく振りかぶって投じた一球は、ワンバウンドし、ホームベースから大きくそれた。「いい経験になりました。もう一回、投げたいですけど」と苦笑いした。
2009年に人材サービス「ビズリーチ」を創業し、今は同社の持ち株会社で東証プライム上場企業「ビジョナル」の社長を務める。
ヤンキースのオーナー株が売りに出ているという話が南の耳に入ったのは、22年春のことだった。
すぐに動いた。
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筆頭オーナーのハル・スタインブレナーや、球団社長らと面談。他にもリーグから財務状況の審査などを受けた。「面談だけで十数人。1年以上のプロセスがあり、最後まで成否は分からなかった」
23年4月、日本人で初めてヤンキースの部分オーナーとなった。スタインブレナーを中心としたパートナーシップ制度の中で、「株式会社に例えると少数株主のような立場」という。
「全米一の会員制クラブ」の一員となった意味は、想像以上に大きかった。
「米国では基本的にどんな方…