協業を発表した(左から)ヤマトホールディングスの長尾裕社長、日本郵政の増田寛也社長、日本郵便の衣川和秀社長(当時)=2023年6月19日、東京都千代田区

 東京都心にそびえる虎ノ門ヒルズのはす向かいに立つ西新橋1丁目ビル。2023年1月20日、本社ビルを建て替え中だったヤマト運輸が入居するオフィスを、日本郵便執行役員の田中豊(55)がひとりで訪ねた。

 田中によると、前日ごろに「ちょっと会えませんか」と携帯に連絡があった。「日本郵便へ行く」と言われたのを押し戻し、自分から出向くアポを取りつけたという。

 相手は、ヤマト専務執行役員の鹿妻明弘(59)。アマゾンジャパンの元副社長で、前年5月に電撃的に入社したことが物流業界では注目の的だった。

 日本郵便で長く物流部門の法人営業を担う田中にとって、以前の鹿妻は重要な得意先の一人。ただ、ライバル企業に転じてからは顔を合わせていない。

 以前の職場ではラフな姿だった鹿妻は、ネクタイを締めたスーツ姿でヤマトの応接室に現れた。あいさつ程度のつもりでいた田中に、鹿妻がさらりと切り出した。

 「ポストに入れる商品の配達は、できれば任せたいと思うんだけど」

 いやいや、冗談でしょ――。はじめはそう受け取ったが、鹿妻は真顔で話を続ける。田中は「それならハイレベルで話しましょう」と提案し、1週間後に互いの上司を引き合わせることになった。

 これがのちに泥沼と化す大型協業の始まりだ。

ヤマト社長との面談メモ

 日本郵便の役員応接室に23…

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