一歩足を踏み入れた人々が、次々と感嘆の声を上げる。天井高およそ15メートルの壮大な空間を、聖書の世界を描いた迫力ある絵が覆う。
正面の壁には「最後の審判」、天井には「創世記」。いずれもルネサンス期の芸術家ミケランジェロがバチカンのシスティーナ礼拝堂に描いた作品を、陶板で原寸大に再現したものだ。
【撮影ワンポイント】大塚国際美術館
瀬戸内海国立公園にある美術館は、自然景観に配慮し、山と同化するように建てられたという。館内は階層ごとに古代、ルネサンス、バロック、現代などに分かれている。全体が環境展示のようで、先史時代の洞窟壁画に触れるような感覚があった。外光の届かない地下で、壁画の世界に没入する雰囲気を写そうと試みた。(伊藤進之介)
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大塚国際美術館は、古代から現代まで1千点以上の西洋名画を陶板で複製展示する。モネ、ピカソ、フェルメールといった名だたる巨匠の作品のほか、聖堂や墓室を空間ごと再現した展示もある。
なかでも「システィーナ・ホール」は目玉の展示だ。2018年には米津玄師さんがNHK紅白歌合戦にここから中継出演し、幻想的な空間で「Lemon」を披露して大きな話題になった。翌19年度の入館者は過去最高の約65万人を記録した。
「初めて来ました。米津さんの紅白を見て、行ってみたいと思っていました」。取材の日も、栃木県から来た20代の女性2人組が、そう声を弾ませていた。
美術館は1998年、大塚製薬などを擁する大塚グループの創立75周年記念事業として、創業の地の徳島県鳴門市につくられた。
陶板に絵画を再現する技術は、グループ内の陶業会社によるもの。経年劣化が少なく、そのままの色と姿で半永久的に残せるという。
複製する絵画は美術史の専門…