大同特殊鋼の知多工場に集められた鉄スクラップ=愛知県東海市、同社提供

2030 SDGsで変える

 「特殊鋼(こう)」は直接目にする機会の少ない鉄ですが、鉄くずから作られる循環型製品です。「社会の基盤を支える素材」と語る大同特殊鋼の清水哲也社長に、その可能性を聞きました。

 ――特殊鋼は、普通の鉄と何が違いますか。

 熱を加えたり、特性を引き出す合金元素を配合したりして、熱や摩耗への強度、さびにくさや粘り強さなどの特性を持った鋼(はがね)です。高温になるエンジンでは普通の鉄の強度では耐えられず、機能を果たせません。高速走行する新幹線のレールの分岐や、強風にさらされる東京タワーの頂上のアンテナにも使われてきました。

 ――「社会の基盤を支える」と考える理由の一つですか。

 社会に存在するあらゆる製品は、材料から加工される過程のどこかで、特殊鋼がほぼ何らかの形で関与しています。エネルギーなどインフラの機器や工場の設備、車や船の主要部品など、見えにくいところに多く使われています。駆動系と言われる、動く力を伝える部分には、とりわけ必要とされる素材と言えます。身近な製品では、ボールペンの先のボールを支える部分も特殊鋼の一種です。インクの流れる道をふさがないよう、高精度で複雑な加工を施したステンレス鋼が使われています。

ボールペンの先にある特殊鋼について話す大同特殊鋼の清水哲也社長=2024年4月、名古屋市

レベルが高い日本の鉄循環システム

 ――特殊鋼はどのようにしてつくられるのですか。

 主原料は鉄スクラップ、日本語でいう「鉄くず」です。寿命を迎えた鉄製品から出てくる老廃スクラップと、工場で製品をつくる過程で発生する加工スクラップを集めて分別します。そして電炉と呼ばれる炉の中で、強い電気のエネルギーによって1600度以上に加熱して溶かします。二酸化炭素の排出量は、鉄鉱石とコークスを反応させてつくる高炉の4分の1程度と言われます。成分調整をしてきれいに固め、加工と熱処理を加えると特殊鋼ができます。

 ――スクラップはどのくらい…

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